カツオよりも生きが良い!? “戻りナナコ”はアートで村おこし(馬路村)

  • 2019年10月25日

上村菜々子さん

高知県出身。2019年4月、馬路村の地域おこし協力隊に着任。

村内の中学校・保育所での美術教育をはじめ、壁画制作や村の特産由来のオリジナル絵具を使ったワークショップの開催など、文化・芸術振興に関わる様々な業務を手掛ける。

ミッション

  • 村全域の文化的発展を望める取組み

ざっくりいうと…

  • 仕事もプライベートも、止まっている暇はない!? パワフルな動きは、日本唯一のダンサーとしても発揮中。
  • 元美術講師のミッションは、全国的にも珍しい「むらの画家」。でも、単に絵を描くだけと思うなかれ。
  • 高知出身でも、村の●●度は想像以上。だからこそ感じる、クリエイターとしてのプラスとマイナスとは?

上村菜々子さんにインタビュー (馬路村)

インタビューに先立ってお願いしていたアンケートで、「今やっていること」が驚くほど多いんですけど……本当にまだ着任して3カ月ですか!?

うーん、我ながら動きまわりすぎて、ちょっと疲れたところはあるかも(笑) 協力隊の活動としては、村の中学校と保育所で美術の先生をやりながら、壁画を制作したり、村の特産である柚子の木とその炭、魚梁瀬(やなせ)スギを活用した絵具を開発してワークショップを開いたり。私のミッションは「村全域の文化的発展を望める取組み」という、限りなくフリーに近いものなので、とにかく企画書をガンガン書きまくって走らせています。何ができるか、どれが通るか分からないし……自分が関わる世界を自分が変えていきたいんです、とにかく生きてる間に(笑)

おお……しかも、余暇は画家として個人で作品制作、お酒を楽しめるイベントを自ら開いたり、アフガンダンサーとして活動したりと、私生活もフルスロットルで。

遅くまでお酒を呑めるお店がない!なら、作っちゃおう、と。アフガンダンスはその名の通りアフガニスタンの伝統舞踊で、2013年頃からライフワークみたいになっています。元々ベリーダンスが趣味だったんですけど、偶然アフガンミュージシャンの方と出会ったことをきっかけに、まず音楽が素敵だなって。ダンスを見てみたら、衣装も動きも、とにかくかわいい!! とドはまりしたんですけど、日本でやってる人がいないんですよ。当然、先生もいない。ネットで見様見真似でやり始めて、日本唯一のアフガンダンサーになりました。今は、毎月東京でダンスのワークショップを開いていて、今度は高知市と村でライブツアーもやるんです。こんな山の中で、アフガニスタンのダンスなんて珍しくておもしろいでしょ(笑)

だいぶ予想の斜め上を! それは芸術家だからなの? と感じるセンスは、ご自身のキャッチコピー「戻りナナコ」にも表れている気も(笑)

高知へのUターンだし、行動力がすごいと言われるので、戻りガツオならぬ戻りナナコで(笑)

じっとしてはいられない、ビチビチ跳ね回る感が言い得て妙です。東京から高知へ戻ろうと決めたきっかけは?

美術講師をしながら創作活動をしていたんですが、父親の病気や、可愛がってくれていた大叔母の死を機に、家族の近くで同じ時間を過ごしたい、と思うようになりました。最初は、うちの家業である農家をやりながら副業で画家を、と考えていたんですけど、昨年末たまたま馬路村の協力隊員と知り合って。ちょっとのぞくぐらいのつもりで村を訪れたら、村長たちと直接話す機会に恵まれて、芸術教育や文化振興を担う人材を求めていると。ここなら、自分のやりたい画家としての活動を本業にできる、そう感じたんです。

なるほど。身近な人の死や健康って、人生観や死生観にすごく影響しますよね。「できる時に動き回りたい」という、想いの源がわかる気がしました。ところでこの取材、失敗談や困ったことについて聞いてるんですが……。

やっちゃった~みたいなことは今のところないです。香南市の出身ですし、ことばも懐かしいなぁって。でも馬路村には来たことがなかったし、大学は大阪、大学院は東京と、県外に長らくいたこともあって、ここの田舎度は未知のレベルで……最初は「ハリー・ポッター」の魔法学校みたいに、時空のゆがみがあるのかなと(笑)

私もここの役場まで来る道、運転しながら結構不安になりました(笑)

ちょっと悩みといえば、創作活動の素になるような、インプットのための空間が足りないところですね。都会なら、バーやカフェにふらっと行ってマスターと話したり、メモ帳片手に頭の中を整理したり、本を読んだり……という、外で何気なく過ごす時間にこそ、クリエイティビティの生まれる感覚があるんですけど。人口も900人を切ってるこの村だと、外に出ればすぐ知り合いに出会うし、会うとやっぱり話しちゃって(笑)

— 芸術家ならではの課題かも。お店に行くと必ず知り合いと一緒になる感覚はとても分かりますが(笑)、豊かな自然など、創作のうえで新たな刺激も多そう。

そうですね、あとこの村で惚れ込んだのが、15年間も閉館したままになっている郷土資料館の元館長さん。もう88歳になるんですけど元気バリバリ、資料館への愛と熱意がとにかく強くて、話をするときはいつもキラキラしてるんです。今も館内に残っている、文化財の手描きの説明もすごくいい味を出していて……どうにか資料館を復活させたいと、動き出しています。実は私、歴史とか文化財ってそれほど興味なかったのに、完全にスイッチ入っちゃって。

— 地域の方の熱い想いもインプットに! これからもイキの良い「戻りナナコ」の活躍が楽しみです。

イチ押し!うちの地域自慢

「相名地区へ向かう道路の山壁」

上村さん:ちょっとマニアックなんですけど、いいですかね(笑)相名(あいな)地区へ向かう途中にある道路の壁面のボコボコ具合が、ワッフルみたいで絶妙に良いんですよ。

立花:確かに想像はつくんですけど、地域のお気に入りとして「壁」が出てくるとは予想外でした……安定の斜め上(笑)