岡山三和さん
高知県出身。2018年3月、仁淀川町の地域おこし協力隊に着任。
郷土料理“いりもち”やこんにゃく、神楽味噌の製造・販売、山菜の採取や活用などに携わり、山の素材を活かした手しごとの技を継承すべく幅広く活動。また、仁淀川町の新しい“図書室“の立ち上げに向け、図書の会の一員として参画し、2021年オープンに向け準備中。新たな移住者のフォローにも注力している。
山の素材を活かした、手しごとの技の継承
(郷土料理“いりもち”の技の継承・販売、こんにゃく・神楽味噌製造の手伝い、山菜採取・活用など)
・日本に誇る、仁淀ブルーと豊かな山と人に吸い寄せられて。親子三人、都会から大自然へ飛び込んだ!
・地域のおんちゃん・おばちゃんも驚く、驚異の行動力……トライ&エラーを続ける母ちゃんはまるで●●だった。
・山の恵みと伝統の技を残し、伝えたい。熱い想いで人と縁をつなぎながら、「ここで暮らす」ビジョンを形にしていきたい。
― 息子さんが今4歳とのことですが、出産前から移住を考え始めておられたそうですね。
新卒で就職したのは農業法人。その後、あれこれ本業を変えながらも畑のお手伝いをしたり、とにかく自然に関わることが好きだったんです。反面、都会育ちの夫はそちらに全く興味はなかったんですが、ある時たまたま行った自然農園のあまりの美しさに衝撃をうけて。元々変化を望まないタイプだったのに、「一次産業がやりたい!」と夫の価値観が大きく変化してしまい、移住先を探しはじめました。大阪にマンション買ってたんですけど……。
― えー! 持ち家を手放しての移住……そのぐらい、仁淀川町に惹かれるものがあったんですか?
私は高知出身なんですけど、実はこの町を訪れたことは一度もなくて(汗)。移住フェアで町の林業研修担当の方と知り合い、夫が「行ってみたい」と感じたのが最初のご縁です。それから2回、3回と町を訪れるたび、町の方とふれあって感じたやさしさにすごく癒されたことや、素晴らしい文化があることを知ったことで、ここで暮らし子育てしていきたいと心を決めました。
― 移住後、旦那さんが林業研修をはじめられた一方で、岡山さんが着任したのは「フリーミッション型」の協力隊ですよね。具体的な活動が決まっておらず、活動に迷う人も多いです。
そうですね、どうしていくべきか、やっぱり悩むことも多かったですよ!でもこの町の素晴らしい人や文化を知るたび、気がつけば動いてました。応募のきっかけは、協力隊の先輩が継承した“池川こんにゃく”のお手伝いをしたい!と思ったことなんですが、そう思えたのはでき立てのこんにゃくを初めて口にした時、美味しさに本当に感動して……小さな息子もめちゃくちゃ食べたんです! こんなにすごいものがあるこの町をもっと知りたい、もっと伝えていきたい、みたいな気持ちが芽生えたことが活動の原動力になっている気がします。
— 親子でこんにゃくに目を覚まされたわけですね(言い過ぎ?)
そうですね(笑)地域の方たちにたくさんご縁をつないでいただき、関係を深めていく中で、たくさんの素晴らしい文化を教えていただきました。私が関わらせていただいているだけでも神楽味噌、日本ミツバチのハチミツ、ぜんまい、ヨモギがどっさり入った仁淀川町の郷土料理「いりもち」。今はこの「いりもち」の製造で起業すべく準備を進めてるんですけど、食べてもらえないのが残念です(涙)(※インタビューは神奈川からオンラインで実施)
— なぜ、お昼前にそんな情報を!! って、それらすべての生産や収穫に携わっているんですよね。活動的というか好奇心旺盛というか……。
知ってしまったんですよ、誇らしいほどの文化があることを。豊かな自然と、そこで育まれた素材と、様々な生活の知恵を生み出し、それをつないできた人がいる。高齢化が進み、若者も町から出て行ってしまう状況でこの先この文化はどうなっていくのか……色んな方からも残してほしい、つないでほしいと言っていただくことも後押しとなり、じゃあ自分がつなぎ手の一人になれないかなと。もちろん、よそから来て町の歴史も文化も知らない人間に「つないでいけるのか?」と不安がありましたが、こんな自分にも大事な技術や知恵を教えていただいて、多くの方々が応援してくださるうちに「やっていく!」って覚悟が固まっていきました。
— 地域には、ヨソモノにはできないこと、ヨソモノだからできることってありますよね。
他の活動としては、町に新たな「図書室」を開設するというプロジェクトにも携わっています。これから全国的に町の存続が大きな問題になっていくはずですが、その時、問題に立ち向かっていくには必ずより強い「文化力」と地域がつながる「場」が必要になると思っています。町の宝である子どもたちに文化的環境を届けたい、そんな思いもあって参加させていただいています。いかん。まじめすぎる(笑)
— マジメ、というより、止まったら死ぬ系の「マグロ」じゃないですかね(笑)
このインタビューにあたって、お題だった「自分のキャッチコピー」について周りに聞いてみたら、「いつも走り回ってる」とか「おせっかい母ちゃん」とか言われて(苦笑)。若い協力隊員のことつい気にかけてしまうし、心に響くとすぐ行動してしまいたくなるたちで……。
― そういうタイプには、やっちゃった!的なエピソードを期待するんですけど、どうでしょう。
恥ずかしいですが実際、動きすぎで失敗したことたくさんありましたよ……。新規事業の多岐にわたる業務をお手伝いする活動があったのですが、実力不足だったことや他の活動と同時進行もあり、キャパオーバー気味で。その上、子どもはよく熱を出し活動時間が足りなくなり、パンクしかけた時があったんです。そんな時、ちょうど協力隊の仲間が増え、みんなが活動に参加して手伝ってくれて(涙)。 おせっかい母ちゃんだけど、本当は私が一番助けられています。
— 助け合う、というのは、地域の中で生活すると強く実感できますよね。
上司や地域の皆さんも、こんな私を「ちょっと動きすぎじゃないかね?」と心配して目をかけてくださって。自分の力だけじゃなく「おかげさま」なんだと実感します。だから、人とのつながりを大事にすること、独りよがりにならないようにすることを意識しながら、ここで暮らしていくビジョンを形にしようと動いています。
— ご家族も、町に馴染んでいますか?
引っ越してきた時、たまたまあった地区のお祭りにお声がけいただき、ご一緒させていただきました。それから、「大きい家族」の中に入れていただいた感じがします。今では子どももご近所さんのお宅に上がらせてもらって、憎まれ口までたたく始末(笑)。 自分の場所になっているみたいです。
— おお、まさに「高知家はでっかい家族やき!」だ。
休みの日も一年目は余裕がなかったですが、今では家族で家の前の川で釣りをしたり、寝転んで星を見たり。最近では標高750mの集落にも作業場兼でお家をお借りしたんですが、地域の方と家族みたいに過ごして楽しませていただいています。町内には高校がないので、子どもは将来町を出ることになるはずですが、帰ってきたいと思ってもらえる場所をつくっていくつもりです!
— 母ちゃんは”マグロ”だけど、息子は一度社会の海へ出て、仁淀川を上る鮭ならぬ”アメゴ”候補!
「誇り高く、”つなぐ”ヒト」
岡山さん:仁淀川町といえば、「仁淀ブルー」が有名ですが、名野川磐門神楽・安居神楽・池川神楽という3つの神楽をはじめ、秋葉まつりや虫送り、火回しといった伝統的な祭事がたくさん残っているのも特徴だと思います。