神野達朗さん
高知県出身。2020年4月、黒潮町の地域おこし協力隊に着任。
移住相談員として、「高知暮らしフェア」をはじめとした移住相談対応や空き家バンクの管理・運営に従事。また、黒潮町発のサッカースクール「Arcoracaon.S.C」の代表を務め、『心に虹を架ける』(スポーツで人と人の笑顔を結ぶ懸け橋となり、「七人七色」の“アルコファミリー”を増やす)を理念として地域のスポーツ振興・人材育成に奮闘中。
・移住相談員
・全国からサーファーの集まる海岸が自慢の町、移住相談は元プロアスリートが熱血対応中!
・自分のクラブを起点に、高知のサッカーとスポーツを盛り上げたい。地域と子どもたちへの強い想いをカタチに。
・でもクラブ代表と相談員の仮面を脱ぐと現れるのは……!? オンとオフのバランスで、新しい土地に無理なく入り込んでいく。
― “元プロサッカー選手”とうかがいました。
2017年まで、高知ユナイテッドSCに所属してプレーしていました。姉の友人の影響で小1からサッカーを始めて、「これはプロにならんとな~!」と思ったんです。
― 卒業文集に書く「将来の夢」を本当に実現してしまう、レアな人ですね。
本田圭佑選手より具体的に書いてたかもしれない(笑)
— ……が、プロ選手から地域おこし協力隊、しかも移住相談員というルートもなかなかレアですよね。
現役時代から指導者としても活動していて、引退後もチームのアカデミーでジュニアユースの専属コーチを務めていたんです。で、いつか自分のクラブを立ち上げたいなぁとあちこち相談していた時、妻の実家がある黒潮町の方が「うちで地域おこし協力隊をやりながら、クラブの準備をしたら?」と紹介してくださって。そこから役場につないでもらい、協力隊の担当課や室長に自分のビジョンを伝えたら「移住相談員のミッションなら両立できそうだね」という話になりました。
― その後応募プロセスを経て採用されたわけですね。地域に入り込むにあたって人脈ほど心強いものはないですからね。
そうですね!もっとも僕自身も移住者になったわけですし、選手やコーチ時代から色々な方とコミュニケーションをとってきたので、今の移住相談の仕事でも自分の経験は生きているとは思いますね。相談の対応をした方が実際に移住してきてくれたり、空き家バンクに登録できる物件を発掘できたりするとうれしいです。
— 相談員に絶対向いてますよ、すごく話しやすいですもん。そして相談員の仕事をこなしながら、宣言通りご自身のクラブをスタートさせたと。
21年の3月に「Arcoracaon.S.C」というクラブを立ち上げて、平日夜に週4日間教えています。これからスポンサー獲得や新規メンバー増加、サッカーに限らず子どもたちが複数のスポーツに並行して取り組めるような仕組みづくり、地域の中学校の部活との連携準備……などなど協力隊卒業後に向けてはやるべきこと、やりたいことはまだまだ多いですけどね。クラブには今、幼稚園児から中学生まで70人が所属してくれています。
— 70人!? 激アツじゃないですか! 高知は元々サッカーが盛んだったのでしょうか?
いや、クラブのメンバー数としては当初の予想よりも少ないですし、サッカー自体も地域的な盛り上がりはまだまだで。そもそも高知は四国でも唯一Jリーグクラブのない県ですし…圧倒的に指導者がいないのが問題なんですよ。有望な子どもたちはたくさんいるのに、県西部ではライセンスの指導者条件を満たしているのは3人だけ。レベルが低いと言われるのは子どもたち自身の問題ではなくてですね……(加熱)
— おお、ちょっとこちらもアツくなってきました(また別の場で)。しかしその熱意こそ、やりたいことを形にする秘訣に見えますね。
「ピーターパン症候群」とか言われるぐらい、自他ともに認める自由奔放な人間かと! もちろん仕事ではちゃんとしてますけど、オフを知ってる人からは“やべー奴”だと思われてるはずですね。友人の家に飲みに行った時、「あんまり遅くならんように」と妻に言われたので「11時には帰る」なんて返事したのですが、帰宅したのは翌日の11時だったとか。酔っぱらって楽しくなっちゃって、道で寝てみよう、ごろーん、とか。
― 意外……童心が残ってるから子どもへの指導がうまい、新しい土地にもすぐ馴染めたということ? でも奥さまの地縁があるとはいえ、田舎暮らしに戸惑いはなかったですか。
市内と比べると、例えばサッカーの指導者と子どもたちの保護者との関係性とか、人と人との距離が近い感覚はやっぱりありますよね。でも、介入しすぎると良くないですし、そこはお互いに心地良いところに持っていくべきものだと思って、うちはうまく調整してるので。
― うーん、やっぱり今のところ極めてまっとうな人に見えるなぁ。
…あ、しいて言えば、築50年の家に“ミッキーの仲間たち”が出るのには困ってるかな。
― ピーターパンのせいで自宅が夢の国になってる(笑) 古い一軒家となると、虫やネズミはある程度覚悟も必要ですね。
一方で子どもたちは、親が想像してたよりもあっという間に馴染んでくれたのが有難いですね!より溶け込みやすいようにと就学前のタイミングで移住したんですが、あっという間に幡多弁ユーザーになりましたし。僕自身も、久々にプレーヤーとして加入した地元のサッカーチームや、スポーツ少年団のスタッフなど、サッカーをきっかけに繋がった人たちとの付き合いを楽しんでます。あとは田舎あるあるで、野菜のおすそ分けをもらったり、新鮮な魚介類が安く手に入ったりするのもいいですよね。
― ご家族ですっと地域に入れていると。では最後に、移住や協力隊への応募を考える方にメッセージをお願いします。
他の地域の協力隊の様子を見ると、ミッション自体の違いはもちろん、活動の自由度や期待されることなど自治体による違いが大きいように感じます。「自然環境が気に入った」など、地域を先に決めて移住される方はもちろん多いですけど、協力隊になるのであれば複数の自治体を比べてみても良いかもしれません。
― “オン”の移住相談員&コーチとしてはやっぱり超真っ当なので、今度はぜひオフでお会いしたいです!
「行政区」
いわゆる「区長さん」がいる地域の単位ですね。たとえば住所上は「黒潮町入野」でも、その下にさらに集落が分かれているような。