久保田忍さん
長野県出身。2016年10月、安芸市の地域おこし協力隊に着任。
東川地域を拠点に、様々なイベントの企画・運営から会計・広報、また伝統野菜の栽培など幅広い業務を手掛ける。
東川地域における以下の業務
— 高知の協力隊で、長野県出身の方にお会いするのは初めてかも……すごく土地柄も違うと思いますが、ゆかりがあったんですか?
最初に高知に興味を持ったきっかけは、坂本龍馬のファンになったことで……あ、えっと、広末涼子さんもですね。それから24歳ぐらいの時にバイクで日本一周中、お遍路のお接待が一番アツくて、すごく印象に残ったんです。沖縄も気に入ってはいたんですけど。
— お遍路きっかけ、結構聞きますね! でも龍馬と広末さんは、思ったよりミーハーだった(笑)。協力隊の応募は、なぜ安芸市を?
東京の移住フェアに足を運んで、各市町村のブースで話を聞いてみて……室戸市の炭焼きか、大豊町の農業のミッションに応募しようと書類を準備し始めたんです。が、何となく決めかねていたところに、安芸市から応募フォームが届いて。わざわざ送ってくれるからには、ソトの人を必要としてるのかなぁ、でも枠が一人しかないし無理かも、と思いつつも提出してみたら合格。後から気づいたんですが、お遍路の時にそこ(取材場所:安芸駅前)のベンチで一晩過ごしたので、縁があったのかもしれないですね。
— 引き寄せられてる感ありますね! ちなみに長野ではどんなお仕事を?
高校卒業後、警察官を目指していたんですが、結果的には自衛隊に入り2年ほど在籍し、体を使う現場仕事をいくつかやりました。元々ずっと柔道をやっていたので、体の仕組みに興味があり、それから勉強して整体師に。でも指を怪我しちゃって続けられなくなって、今に至ります。自衛隊の時に「もう公務員はいいや」と思ったのに今もまたやってるのは、自分でもどうかなって感じですが(笑)
— 戻ってる(笑)ってあれ、先日インタビューした香南市の協力隊も自衛隊出身、日本一周、沖縄と高知を気に入った、という経緯で、驚くほど被ってますよ! 香南市・齋藤さんのインタビューはこちら
ちょっと変わった人が多いんですかね(笑)
— (……それは協力隊が?自衛隊が?) 何にせよ、オールジャパンから選ばれし高知県の魔力! 暮らすうえで、何か困ったことや失敗談はありました?
ベタですが、土佐弁は最初全然わからなかったですね。「おく(仕事にキリをつける)」とか、「のうがえい(使い勝手が良い)」とか……文脈から推測、という感じでした。あとはもう慣れちゃいましたけど、10時以降に空いている飲食店が地域にないので、牛丼チェーンみたいにさくっとゴハンが食べられないところですかね。
— わかります! 一人暮らしだと、自炊って案外コスパ悪かったりしますしね。仕事、活動の面はどうですか?
一番大変だったのは……パソコンかなぁ。主な活動拠点の集落活動センターは、東川公民館と同じ建物で、地域の色んな団体の事務やら会計やらを一手に引き受けてるんですけど、館長も70歳を過ぎていてパソコンの扱いには苦労してて。これは手伝わなきゃ! と思ってやるわけですが、自分も仕事でパソコンをいじったことがないし、とはいえ教えてくれる人もいないし……ネットで調べながら毎日格闘して、「何でこんな山ん中で遅くまでパソコンやってんだろ」と(笑)
— 確かに、それまでのお仕事ではまず使う必要ないか。でも、仮に得意なことじゃなくても、困ってる人を助けたいというのは、警察官志望の頃から通じてるのかも。さて、まもなく3年の任期満了になりますが、卒業後のご予定は。
地域に残りたい、という気持ちは強いです。着任一年目から伝統野菜の「入河内大根(にゅうがうちだいこん)」の栽培に携わっているので、東川で農業をやるというのも選択肢の一つですが、炭焼きにも興味があって・・手に職をつけて独立するための修行期間として一時的にここを離れるという可能性もゼロではないかなと。
— なるほど。卒業直後のことだけにとらわれず、長い目で見た地域への貢献というか、愛を感じますね。 市役所の職員さんにも、そういった心境は正直に伝えられている感じでしょうか。
そうですね、協力隊の担当である企画調整課の方には、随時相談させてもらっています。あくまで現時点ですが、集落支援員として地域に残りたいと思っています。
— きちんとコミュニケーションがとれている、というのはとても大事! 色んな可能性があって私にとっても楽しみなので、卒業後の続報(?)お待ちしております。
「入河内大根(にゅうがうちだいこん)」
久保田さん:平家の武士が持ち込んだと言われる伝統野菜で、根元の部分が赤みを帯びてること、梨のようなシャリシャリした食感で甘みがあること、何より3kg以上というそのサイズが特徴です(太ももぐらいあり、大きいものは10kg!)。煮崩れしにくいので、おでんなどがオススメ。生産量が限られていますが、地域の名前がついているので、出荷するだけでご当地PRになる貴重な宣材だと思っています。8月から畑づくり、9月に種まき、1・2月に収穫です。