髙地竜馬さん
東京都出身。2018年10月、土佐市の地域おこし協力隊に着任。
20種類以上のトマトを栽培する「ファーム輝(かがやき)」に弟子入りし、トマトづくりの修行に励む。卒業後に農家として独立すべく、日々ビニールハウスで奮闘中。
― お名前が竜馬さん、苗字の「髙地」が「高知」だったら、さながら芸名ですね。
高知龍馬空港みたいでしょ(笑) 自分は東京の生まれ東京育ちですが、高知出身の父が坂本龍馬の大ファンなんです。
― しかもそれで、いざ高知に移住してきてしまうから運命を感じますね。
親戚が住んでいるので、子どもの頃から土地として馴染みがありました。海も山も川もあって、外国みたいにゆったりしてて、ご飯も美味しい。東京での仕事に疲れを感じていた時だったので、高知市役所に移住相談に来たら、協力隊の制度を紹介されて。農業のミッションがある市町村から、土佐市を選び応募しました。
― 都会での「バーンアウト(燃え尽き症候群)」がきっかけという移住者は多いですが、農業には元々興味があったんですか?
高校生の時にイタリアン、居酒屋、スペインバルにラーメン屋と、あらゆる飲食店のアルバイトをやっていたこともあり、食に関わる仕事をしたいなと。ちなみに前職では、代官山のカフェで店長をしていました。高卒で入ったアパレル企業から映像制作会社に転職し、そこの新規ビジネスとして飲食事業を立ち上げたんです。
— なんと経験豊富な。しかも直前の職場は都内随一のオシャレスポット、なのに今は畑! すごい転身ですね。
「食のルーツ」として、農業に行きついた感じですかね。中でもなぜトマトかというと、純粋に一番好きだったからなんですけど……今、弟子入り中の「ファーム輝」の師匠が作るトマトが、とにかく!すっっっごく!!美味いんですよ!!!
— おおお、いきなり愛情が爆発してきたぞ。すっかり、惚れちゃったんですね。
そうですね。お世話になっている、という点を差し引いても、もうめちゃくちゃに甘くて……師匠は天才ですよ。作るなら糖度が高いトマトを、と考えていたので、ここで修行できる自分は幸運だと思います。
— お師匠さんにも恋してる! やっぱり、住む場所や仕事を選ぶうえで「人の縁」って重要ですよね。
高知で一番気に入っているのは、何よりこの「人柄」なんです。土佐市を選んだのも、採用の段階から市役所の協力隊担当職員や先輩隊員の方々にとても良くしていただいた、というのが大きくて。着任後も色々と相談させてもらっていますし、自分が引き寄せた気はするかなぁ。
— 「引き寄せ」のパワーワードはキャッチコピーに採用! さて実際に移住してみて、「やっちゃった」ことはありませんか?
夜道を運転している時に、道路脇の水路に気づかずにバックして、脱輪したのは大変でした。地域の皆さんの助けですぐに脱出できたんですが、家に戻る高速道路でパンクしちゃって、結局ロードサービスのお世話に。。。
― 夜でもすぐ手助けしてもらえるのも、土地柄かしら。活動面ではいかがでしょう? 大変だったこととか。
実は、ひどく体調を崩して心が折れかけたんです。暑いビニールハウスの中で、指示された作業の意図もわからず闇雲に動いていたせいか、初めの1,2カ月は本当にしんどくて。一方で、年配の方々は同じ作業に耐えているし、仕事は早くて丁寧。なぜ自分にはできないのかと……でも、少しずつ作業に身体を慣らしつつ「なぜこの作業をするのか」を学んでいくうちに、徐々に体の動かし方やコツがわかっていきました。
— 体力仕事だけど、頭を使うかどうかが体の使い方にも影響する、と。そんな辛い時期のモチベーションは……
好きなんです、ここのトマトが(即答)。あれこれ食べ比べしていますが、うちのが一番です!
— やっぱり、愛か(笑)
基本的に、すごくポジティブな性格というのもあると思いますが。友達や知り合いはもちろん、飲食業界の人たちにも、この美味しさを分かってもらいたい、という気持ちが強いですね。
— 協力隊卒業後、そんなトマトに永久就職(?)できそうですか。
二反(2k㎡)ぐらいの農地を持って独立できればと、県内で休耕中のハウスの情報を収集しています。新規就農は初期投資がかかりますし、一人や二人でそれだけの農地を回していくのは簡単ではないので、不安はもちろんあるんですが……今が人生で一番、やりたいことをやれているという実感があるし、楽しさの方が大きいですね。
— イキイキした表情が良いですね。しかしここまで語られると、私もそのトマトを食べずには死ねない!!
ネットの通販もありますが、連絡もらえれば送りますよ! もちろん、独立したら自分のトマトもよろしくお願いしますね!?
— 私も普段から、高知から箱で取り寄せるトマトファンなので。楽しみにしています。
「仁淀川の河口」
髙地さん:休日は、趣味のサーフィンを楽しんでいるんですが、ここは世界的にもトップクラスの人気サーフスポット。プロもたくさん来ていて、波が良い日は付近がギャラリーでいっぱいになるほどです。それから天気の良い夜は月がすごく綺麗で、「月明りの道」ができるのがお気に入りの景色です。